アービトラージ(裁定取引)とは?FXや仮想通貨で必要な知識をわかりやすく解説!
投資を始めると「アービトラージ」という用語を耳にすることがあります。アービトラージを知ることで、投資の幅が広がりますが、聞き慣れないことから、難しく感じてしまい、手を出せないでいる方も多いでしょう。
本記事では、アービトラージについて、用語の意味や実際の取引方法、メリット、注意点を中心に解説をします。実際に利益を出した事例も紹介するので、本記事を参考に投資に役立ててみてください。
目次
アービトラージ(裁定取引)とは?投資で扱う裁定取引のこと!
アービトラージとは、投資で扱う裁定取引のことです。取引所間の価格差を利用する方法で、株式投資やFX、仮想通貨の取引で使われています。アービトラージを理解することで、投資方法の幅が広がり、さらなる利益の追求につながります。
ここでは、アービトラージについて、用語の具体的な意味や実際の使われ方を中心に見ていきましょう。
アービトラージとは?
アービトラージとは、同一の価値を持つ商品の価格差を利用する方法です。一般的には、理論価格(予想価格)よりも割高な銘柄を売りつつ、理論価格よりも割安な銘柄を買います。その後、両者の価格差が小さくなったときに、反対売買を行って利益を獲得しようとするものです。「サヤ取り」や「スプレッド取引」ともいわれています。
アービトラージは、株式投資やFX、仮想通貨、コモディティ取引で使われており、近年ではヘッジファンドの投資手法を指す用語として使われることが多いです。
価格変動を狙って売買を行う短期トレードと比べて難易度が低いので、安定した利益を狙うことができます。
トゥルー・アービトラージ
トゥルー・アービトラージは、異なる取引所で取引されている同じ銘柄の価値の差に着目する方法です。同じ銘柄でも取引所によって価格が変動することを利用します。複数の取引所を確認し続けることが必要です。
リスク・アービトラージ
リスク・アービトラージは、相場が急変動する際に使われる方法です。上場企業間の合併・買収(M&A)を見込んで、その値動きを利用する買収合併アービトラージが代表例です。買収する側の株価は一時的に下がり、買収される側の株価は一時的に上がることを前提として取引をします。
アービトラージの基本用語を紹介
アービトラージでは、いくつもの専門用語が登場します。投資を始めて間もない方は、専門用語がわからなくて理解が難しいと感じてしまうでしょう。ここでは、アービトラージの理解を深めるために必要な用語の意味を紹介します。
反対売買
投資では、買った銘柄を売らなくてはならない期日と、売いた銘柄を買わなくてはならない期日が決まっています。そして、期日までに反対の売買をおこなわなければなりません。このことを反対売買といいます。
決済は売買代金の総額ではなく、買いの代金と売りの代金の差額でおこなわれます。
サヤ(スプレッド)
サヤは相場の価格差のことで、スプレッドともいいます。投資ではサヤを利用することも多いです。買値より売値が高い状態を順ザヤ、その逆の状態を逆ザヤと呼びます。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、さまざまな方法を駆使して、常に利益を追及することを目的にしたものです。通常の投資では、相場が上下の一方向に動いたときのみ利益が出ますが、ヘッジファンドは相場が上がっても下がっても利益を狙うことができます。リスクを減らしながらも積極的な運用ができるので、投資対象として人気が出てきています。
アービトラージはどこで使う?
先述したとおり、アービトラージは仮想通貨や株式投資、FXで使われている手法です。それぞれでどのように使われているか見ていきましょう。
仮想通貨
アービトラージが最も多く使われるのが仮想通貨の取引です。仮想通貨の取引では、最も簡単な安い取引所で購入して、高い取引所で売却する手法が使われています。価格差が小さいので少額の利益になってしまいますが、安定して利益を出すことが可能です。
株式投資
株式投資では、買収合併アービトラージを利用する場合が多いです。反対売買の期間が限定されない無期限信用取引と組み合わせることで、利益を狙いやすくなります。
FX
FXでは、仮想通貨や株式投資と同様の手法がおこなわれているほか、「3通貨アービトラージ」という手法もよく使われています。3通貨アービトラージは3つの通貨の価格差に着目したものです。
たとえば、日本円をアメリカドルで購入、アメリカドルをユーロで購入、ユーロを日本円で購入といったように、3つの通貨をめぐらせることで利益を狙います。取引が複数回に分かれるため、手数料を考慮する必要があります。
アービトラージのメリット3つ
アービトラージのメリットは以下の3つです。
- リスクを低く抑えられる
- 価格の変動を待つ必要がない
- 専門知識がなくても扱える
順に見ていきましょう。
リスクを低く抑えられる
アービトラージは価格差を利用する方法なので、リスクを低く抑えられます。価格差を利用して短期で利益を出すので、通常の投資のように銘柄の暴落を恐れる必要がありません。リスクを抑えられるので、初心者でも積極的に運用できる手法です。
価格の変動を待つ必要がない
アービトラージは価格の変動を待つ必要がありません。通常の投資では、中長期にわたって銘柄の価格を追う必要がありますが、アービトラージではすぐに利益を出すことができます。取引所間で価格差があれば、いつでも取引できる強みがあります。
専門知識がなくても扱える
アービトラージでは、銘柄や、分析に必要な知識を必要としません。価格差に注目するだけでおこなえるので、知識の浅い初心者でも始めやすいです。銘柄の価格変動を予想するための情報収集も必要がありません。
勉強や情報収集の時間を省けるので、忙しい方でも片手間で取引できる魅力があります。
アービトラージのデメリット3つ
アービトラージのデメリットは以下の3つです。
- 価格差がなくなる場合がある
- 手間がかかる
- 大きな利益を得にくい
順に見ていきましょう。
価格差がなくなる場合がある
アービトラージでは、取引中や送金中に価格差がなくなる場合があります。取引中も送金中も価格は常に変動しています。売却時には価格差がなくなる場合やマイナスになる場合もあることを理解しておきましょう。
手間がかかる
アービトラージは手間がかかります。チャートを見ながら価格上昇を待つ必要はありませんが、価格差を見つけるために取引板を見ておかなければなりません。送金の回数が多く、手数料もかかりやすいです。取引に手間がかかることを理解しておきましょう。
大きな利益を得にくい
アービトラージは価格差を利用する方法なので、大きな利益を得にくくなっています。ある程度の利益を得るには、小さい利益を積み重ねるか、巨額な投資資金が必要です。手持ちの資金が少ない人が一挙に大きな利益を得ることはできないことを理解しておきましょう。
アービトラージのやり方3選
アービトラージは価格差を利用する方法で、3パターンのやり方があります。簡単な方法やリスクを抑えた方法があるので、それぞれの内容をしっかりと把握しましょう。
安い取引所で購入して高い取引所で売却する
価格差を利用するアービトラージのなかで最も取り組みやすい方法です。具体的な手順は以下のとおりです。
- 価格が安い取引所で銘柄を購入する
- 価格が高い取引所に銘柄を送る
- 価格が高い取引所で銘柄を売却する
銘柄の知識がなくてもできる方法なので、初心者におすすめです。銘柄の価格差が小さいことが多いので、利益はわずかなものですが、積み重ねることで利益を増やせます。送金や取引の最中に価格差が無くなる場合があるので、なるべくスピーディーにおこなうことが大切です。
両建てをしたあと送金して売却する
先述したとおり、安い取引所で購入して高い取引所で売却する方法は、価格差がなくなり、利益を得られない場合があります。価格変動のリスクを抑えつつアービトラージをするには、両建てをしたあとに送金して売却する方法が最適です。手順は以下のとおりです。
- 価格の安い取引所Xで銘柄を購入する
- 同時にもう一つの取引所Yで同じ価値の銘柄をXと同じ量空売りする
- 取引所Xで購入した銘柄を取引所Yに送る
- 取引所Yに送った銘柄と空売りした銘柄を売る
空売りをすることで、相場の下落を利用して利益を狙うことができるので、価格変動のリスクを抑えられます。銘柄を送る際に手数料が発生するので、手数料が安い取引所を確認しておきましょう。
両建てをしたあと送金せずに売却する
両建てをしたあとに送金をしないで売却する方法もあります。両建てをしたら価格差がなくなるまで待つ方法です。手順は以下のとおりです。
- 価格の安い取引所Xで銘柄を購入する
- 同時にもう一つの取引所Yで同じ価値の銘柄をXと同じ量空売りする
- XとYの価格差がなくなったところで売却する
たとえば、取引所Xで100万円の銘柄を購入、同時に取引所Yで102万円で空売りをしたケースをみてみましょう。徐々にXとYの価格差がなくなり、どちらも101万円になったところで売却と決済をします。
取引所Xでは、100万円分の銘柄が101万円になるため、1万円の利益が出ます。取引所Yでは、102万円で売却した銘柄を101万円で購入するため、1万円の利益です。2つを合わせることで、2万円の利益を得ることができます。両建てをすることで、コストがかかりやすくなっている点には注意しておきましょう。
アービトラージのコツは?
ここまで、アービトラージの意味や手法を解説し、初心者でも取り組みやすい方法であることを紹介してきました。ここからは、実際にアービトラージをおこなううえで意識しておくとよいコツを紹介していきます。
複数の取引所のレートを知っておく
アービトラージは銘柄の価格差を利用する方法なので、レートの違う取引所を複数知っておかなければなりません。取引所のレートを比較して、差が大きくなったタイミングを逃さないようにすることが大切です。
取引所のレート差がわからないと、利益を生み出せなくなってしまうので、事前に取引所の情報を集めておくようにしましょう。
売却手続きをスピーディにおこなう
アービトラージでは売却手続きを素早くおこなうことが大切です。アービトラージでは、取引・送金中に価格差がなくなる場合があるからです。価格差がなくなると、利益を出せない状況に陥り、手数料で損になってしまう可能性もあります。
価格差が発生したらスピーディに売却・決済をおこなうことで、少しでも価格差が大きい状態を保つことが大切です。手続きが遅れるほど利益を出せない可能性が高まります。
一度で大きな利益を出そうとしない
アービトラージは一度の取引で多額の利益を得るものではありません。小さな利益を積み重ねていくことで、将来的に利益を増やしていく方法です。わずかな回数で大きな利益を出そうとせずに、長期的な考えで何度も繰り返して利益を出すようにしましょう。
一度に利益を得たいと思った場合は、いったん取引を中止して間隔をあけて気持ちを落ち着かせるとよいでしょう。
アービトラージで利益を出した事例
ここまで説明してきたとおり、アービトラージは取引所間の価格差を利用する方法です。説明だけではわかりにくいので、例をあげて見ていきましょう。
取引所名 | 購入価格 | 売却価格 |
取引所X | 100円 | 98円 |
取引所Y | 105円 | 102円 |
取引所Z | 98円 | 95円 |
※実際は送金や売却時に手数料がかかりますが、ここでは考慮せずに計算していきます。
取引所Xで購入した場合
取引所Xで購入した100円の銘柄を、取引所Yで102円で売却をすると、2円の利益が出ます。同様に取引所Zで95円で売却をすると、5円の損失です。
取引所Yで購入した場合
取引所Yで購入した105円の銘柄を、取引所Xで98円で売却をすると、7円の損失が出ます。同様に取引所Zで売却をすると、10円の損失です。
取引所Zで購入した場合
取引所Zで購入した98円の銘柄を、取引所Xで98円で売却をすると、価格差がないため利益は0円です。同様に取引所Yで102円で売却をすると、4円の利益が出ます。
アービトラージをおこなう際の注意点3つ
アービトラージは初心者でも利益を出しやすい反面、注意をしていなければ大きな損失を出してしまう可能性があります。ここでは、アービトラージをおこなう際に気を付けたいことを3つ紹介していきます。
複数の取引所を使うようにする
アービトラージは価格差を利用する方法なので、複数の取引所に登録をしておきましょう。少しでも取引の回数を増やすために、2つとは言わずにできるだけ複数の取引所の登録が必須です。
取引所を複数持っておくことで、価格差を大きくしやすくなるメリットや、送金手数料が安い取引所を使えるメリットもあります。
少額の資金でおこなわないようにする
先述したように、アービトラージでは複数の取引所を使うので、各取引所に資金を入金しておく必要があります。価格差を見つけてから入金をするのでは間に合いません。
アービトラージでは、得られる利益が少額になりがちなので、ある程度の資金で勝負をしないと手数料負けしてしまいます。まとまった資金を用意して、各取引所に分散しておくことが原則です。
詐欺に注意するようにする
アービトラージでは、高額ツールを使った詐欺に引っかかる可能性があります。アービトラージでは、価格差を自動で判別するツールや、自動売買をおこなうツールを利用することが少なくはありません。
さまざまなツールがありますが、中には「確実に利益を得られる」と称して、数十万円のツールが販売されている場合があります。支払い後にツールが使えないことに気が付いても遅いので、ツールに手を出す際は評判が信頼できるものにしましょう。
アービトラージをおこなう際に使うべきシステム3つ
アービトラージは一回の取引で多数の手順を踏まなければなりません。レートの確認、銘柄の取引、決済とやることが多いです。したがって、システムをまったく使わずに自力でアービトラージをおこなうことは不可能です。
ここでは、アービトラージに必須なシステムを3つ紹介していきます。
レートを確認できるシステム
アービトラージでは、レートの確認が不可欠です。さまざまな取引所のレートを確認することで、得られる利益を算出することができます。
銘柄によっては、取引所間でかなりの価格差が出ている場合があるので、取引所のレートを確認できるシステムは欠かせません。
取引に時間がかからないシステム
取引に時間がかからないシステムを使うことも大切です。アービトラージでは、時間がかかるほど価格差が変動する恐れがあります。取引する銘柄を決めるスピードも大切ですが、送金や売却に時間がかからないシステムを利用するとよいでしょう。
予想利益を算出してくれるシステム
アービトラージにより、どの程度の利益を得られるのか算出するシステムも便利です。銘柄ごとの期待値が出せれば、アービトラージの成功率が高まります。
スピードが重要なアービトラージでは、予想利益をいかに早く算出するかも成功の要素です。システムを利用して予想利益を瞬時に把握することで、アービトラージの精度を高めましょう。
アービトラージは違法?
2023年2月現在では、アービトラージは違法ではありません。アービトラージを禁止している国内取引所はなく、有効な手法とされています。一部海外FXでは、業者の規定によりアービトラージをおこなえない場合はありますが、国内の取引では規制なくおこなわれています。
しかし、国内でも今後規制がかからないとはいえません。取引所からの知らせやニュースに注目をしておきましょう。
まとめ
本記事では、アービトラージについて意味や手法、実際の取引事例を紹介しました。初心者でも扱いやすい手法ですが、必ず利益を出せる手法ではないため、デメリットもしっかりと把握しておかなければなりません。アービトラージを有効活用し、投資の結果を充実させていきましょう。